皇居(こうきょ)の奥深くには、賢所(かしこどころ)・皇霊殿(こうれいでん)・神殿(しんでん)という3つの神殿=宮中三殿があります。
ここは天皇陛下(てんのうへいか)が国と人々の安寧を祈られる“皇居の中の神社”
1|宮中三殿ってなに?(超要約)
殿名 | 祀られている存在 | かんたん説明 |
---|---|---|
賢所(かしこどころ) | 天照大御神(あまてらすおおみかみ) | 皇室の祖神。古くは**内侍所(ないしどころ)**とも。 |
皇霊殿(こうれいでん) | 歴代天皇・皇族の御霊(みたま) | 先祖を敬い、徳を偲(しの)ぶ場。 |
神殿(しんでん) | 天神地祇(てんじんちぎ)=八百万(やおよろず)の神々 | 天地自然の神々に感謝と祈りを捧げる場。 |
2|三殿の配置(はいち)と付属施設
(南向き・一列配置)
[西] 皇霊殿 ──【中央】賢所── [東] 神殿
│
└─ 神嘉殿(しんかでん)=新嘗祭(にいなめさい)の正殿
南庭(なんてい)・前庭(ぜんてい):
四方拝(しほうはい)/大祓(おおはらえ)/神宮遥拝(ようはい) など
付帯:綾綺殿(りょうきでん:潔斎・着装)
神楽舎(かぐらしゃ)・奏楽舎(そうがくしゃ)・幄舎(あくしゃ:待機)

- 中央=賢所/西=皇霊殿/東=神殿が基本。
- 神嘉殿は新嘗祭専用の御殿。南庭・前庭は屋外儀礼(四方拝・大祓など)の舞台。
- 準備や着装、雅楽(ががく)奉奏、参列動線は付属施設で運用。
3|年間の祭事
※日付は通例に基づく代表例。時刻は年によって変動します。
月日 | 行事名 | 主な場所 | 何をする? |
---|---|---|---|
1/1 早朝 | 四方拝(しほうはい) | 神嘉殿 南庭 | 一年の始め、伊勢神宮・歴代天皇陵・天地四方に遥拝(ようはい) |
1/1 | 歳旦祭(さいたんさい) | 三殿 | 年始の祈り(国家安泰・五穀豊穣) |
1/3 | 元始祭(げんしさい) | 三殿 | 皇位の元始をことほぎ、国の繁栄を祈る大祭(たいさい) |
2/17 | 祈年祭(きねんさい) | 三殿 | その年の**五穀豊穣(ごこくほうじょう)**を祈る |
春分 | 春季皇霊祭・神殿祭 | 皇霊殿/神殿 | 祖先を敬い、神々に感謝 |
6/30 | 大祓(おおはらえ) | 神嘉殿 前 | 半年の“つみ・けがれ”を祓(はら)う |
10/17 | 神嘗祭(かんなめさい) | 賢所/神嘉殿 | 新穀(しんこく)を天照大御神へ。神宮の神嘗祭に呼応 |
11/23 | 新嘗祭(にいなめさい) | 神嘉殿 | その年の新穀を奉り、陛下も共食して感謝 |
12/31 | 大祓 | 神嘉殿 前 | 一年のしめくくりの祓い |
毎月1・11・21 | 旬祭(しゅんさい) | 三殿 | 定例の拝礼(1日は原則、陛下ご拝礼) |
4|日々の営み(にっく・御代拝)
- 日供(にっく)の儀:毎朝、米・酒・塩・海菜・野菜・果実など**御神饌(ごしんせん)**を三殿へ供進。
- 毎朝御代拝(まいちょうごだいはい):当直の侍従(じじゅう)が賢所・皇霊殿・神殿を代拝。その間、両陛下は御所で遥拝。

5|運営する人たち(掌典職・内掌典)
- 掌典職(しょうてんしょく):宮中祭祀の奉仕者
- 掌典長(しょうてんちょう):責任者
- 掌典(しょうてん):祭具・供物・次第・進行の要
- 内掌典(ないしょうてん):女性奉仕者。三殿そばに常勤し、日供・清掃・装束補助などを担う
6|宮中三殿と日本文化(意味)
- 敬神崇祖(けいしんすうそ):神を敬い、祖先をまつる日本の精神を体現
- 稲作文化:神嘗祭・新嘗祭は、新穀に感謝し翌年の豊穣を祈る農耕儀礼の芯
- 四季と年の区切り:四方拝・大祓など、季節や年の転換点を清める行事
- 現代の位置づけ:戦後は皇室の**伝統的行事(内廷行為)**として継承。天皇の祈りが今日まで続く
7|よくある質問(FAQ)
Q. 見学できますか?
A. 非公開です。写真・広報は宮内庁の発信を参照。
Q. 宗教施設なのに、国との関係は?
A. 戦後は公的制度から切り離された伝統行事として継続。学術的に宗教性と公私が議論されますが、実務上は皇室の私的な祈りの場として位置づけられます。
Q. 伊勢の神宮との関係は?
A. 賢所の祭神=天照大御神は伊勢神宮・内宮の御祭神と同じ。神嘗祭では宮中から神宮を遥拝します。
コメント